ジグボーラーとは? 治具製作に最適な高精度中ぐり加工など特長と加工事例を紹介します。

ジグボーラーは、その名の通り治具(ジグ・Jig)の加工に最適な工作機械の一種で、穴中心の迅速かつ正確な位置決めを可能とする機構を持ち、高精度な穴あけ・中ぐり加工を行うことができます。近年はNC機・マシニングセンタの性能向上も進んでおり、位置決め精度もジグボーラーとそん色ないレベルまで上がってきていることから、影が薄くなりがちなジグボーラーではございますが、その構造と性質から精度面では絶対的な優位性を持ち、仕上げ専門で用いることで高い効果を発揮します。それでは、ジグボーラーの構造や性質、メリットとは一体どんなものなのでしょうか?今回の記事では、60年間治工具製作をメインに行った治工具専門メーカーが、加工・製作事例も含めて、解説いたします!
はじめに:ジグボーラーとは? - 基本的な定義と概要

ジグボーラーは、主に精度が求められる穴加工を行うために用いられる、工作機械の一種です。JISにおける正式名称はジグ中ぐり盤となり、ジグボーラーと呼ぶことが一般的です。
その名前の由来は、治具(ジグ・Jig)に由来し、治具の製造を効率よく行うために開発されました。治具は、主に製品加工、量産時に用いられ、製品加工時の精度の向上および均一化、ならびに加工時間の短縮・効率化の効果をもたらします。治具を用いない場合は、加工者は工作物にケガキ(印をつける)するなどして、切削工具をあてる位置の制御・案内を行いますが、治具はこの手間を省くことができるため、作業能率を上げることができるほか、人為的作業(ケガキ作業)による精度の低下を防ぐことができ、仕上がり寸法のバラつきを最小限に抑えることができます。
一方で、治具は製品加工に用いられるという性質上、治具に求められる精度は、製品よりも一段階上となり、精密加工を行う技術の発展が求められました。そこで開発されたのが、ジグボーラーです。ジグボーラーは高精度な中ぐり加工を行うために設計されており、金属や樹脂などの材料に穴を正確に加工することができます。
また、ジグボーラーは、そのものの構造で精密機械加工を行うことが可能です。したがって、多くの場合、ジグボーラーは治具不要で精密加工を行える工作機械とも言うことができ、治具を作るほどでない数量の場合や治具を製造するための時間が十分に用意できない場合に、製品加工を行うにはうってつけの機械となります。
ジグボーラーの特長とメリット

ジグボーラーの特長・メリットは、以下のようなものが挙げられます。
1. サブミクロンオーダーの高精度な穴加工が可能
ジグボーラーは、穴あけの精度に非常に優れており、マイクロメートル単位で穴を加工できます。高精度加工は、高性能な光学式の位置読み取り装置を備えているほか、高い真直度と剛性を実現するヘッド、微細な送りおよび工具の高トルク回転を実現する機構など、ジグボーラーが多数でそれぞれ高性能な機構を持つことで実現されます。穴の位置決め精度は±0.003~±0.005mm程度、サブミクロンオーダーの数値が得られ、結果として治具含めた製品の穴が合わせやすくなり、製品の寸法精度が向上、摩耗による劣化も防げます。
2. フライス切削加工をはじめとした他の加工も高精度で行える
ジグボーラーの主な活用法は穴の中ぐり加工になりますが、ツール(切削工具)を変えることでフライス加工をはじめとした様々な加工に応用ができます。ジグボーラーは構造的に高い剛性を持ち、また、主軸の高トルク回転が可能なモデルも多く出てきているため、重切削を高精度に行うことが可能です。さらに、ジグボーラーのヘッドは、複雑な角度が求められる加工にも対応可能な設計がなされており、複雑形状の加工も正確に行うことができます。また、三次元測定機として代用が可能といった特徴も備えております。
3. ジグボーラー自体が精密に設計・製造されているため、高精度加工を実現できる。
ジグボーラーの設計では、直角度、平面度、平行度等あらゆる公差が極めて厳しく設定され作られているため、高精度加工を実現することができます。また、弊社で導入しているジグボーラーでは摺動面にきさげ加工が施されており、高精度加工を可能としているほか、経年劣化の抑制も図れております。一方で、機械スペックの十分な発揮と維持を行うためには設置環境への配慮が必要になるほか、日々のメンテナンスも重要になります。一般に恒温環境が求められ、弊社では23℃±2℃を保つようにシビアな温度管理を行っているほか、毎日のメンテナンスを義務付けております。メンテナンスでは、機械と周辺の清掃はもちろん、摺動面のメンテナンスも含め、機械品質の維持を行っております。
ジグボーラーによる高精度加工に向けて求められるスキル

ジグボーラーがミクロンオーダーの精密加工を行う場合に適した設備であることを説明してまいりましたが、一方で、ジグボーラー加工における操作には熟練技術者が必要不可欠です。加工技術としては、使用するバイトの研ぎ方や、削りと測定を交互に実施し、修正を重ねて仕上げるノウハウなどが挙げられます。作業者に求められるスキルとして、ミクロン単位の精度を『手』で感じ取ることができる熟練技術、つまるところ『感性』となる部分が大きいと弊社も考えており、スキルの醸成には長年の経験が求められます。したがって、ジグボーラーはサブミクロンオーダーの高精度加工を実現する非常に高い性能を持つ設備ではありますが、経験者無くして性能を充分に発揮できるケースは少なく、人とコスト、技術養成の時間コストまで要する部分は、自動化によるコスト削減が求められる業界の流れに反していることも含めて考えると、デメリットであるとも言えます。
ジグボーラーとマシニングセンタの比較

ジグボーラーとよく比較される工作機械として、マシニングセンタが挙げられます。
マシニングセンタは、ジグボーラーと同じく回転工具を使用し、フライス削り加工や穴あけ加工を行う工作機械で、自動工具交換装置(ATC:Auto Tool Changer)を備えており、従来のフライス盤で時間がかかっていた工具交換の工数が削減され、スピーディな加工が可能です。したがって、量産に適した機械であり、人手による作業の割合が多いジグボーラーと比較すると、製品の数量によっては大きくコストダウンを図ることができます。また、近年マシニングセンターの位置決め精度も著しく向上しており、ジグボーラー並の高精度加工も可能です。
一方で、ジグボーラーとマシニングセンタは構造から大きく異なる製品であり、ジグボーラーは機械自体の設計が極めて厳しい精度で行われているため、機械加工における精度面でジグボーラーの方が有利な場面が多く、設置環境への配慮とメンテナンスは重要ですが、経年劣化による精度低下も抑えることができます。特に、ジグボーラーは仕上げ加工に用いることで性能を発揮するという点でも、二者で住み分けも明確であり、お互いにメリットがあり、製品に求められる精度やロット数、コストに応じて使い分けが必要になります。
当社所有のジグボーラーのご紹介

弊社は計6台のジグボーラー(ジグ中ぐり盤、超精密マシニングセンター)を保有しております。先述した通り、ジグボーラーの操作には熟練技術者も要することもあり、この台数を保有する会社は全国的に見ても極めて稀です。弊社では、各設備に専任の加工者を配置しており、常に稼働させている状況になります。加工可能範囲について、最大の設備でテーブルサイズが1830×1200, 可動範囲がX1530×Y1020×Z925のマシン(三井精機 7CM)を保有しており、手のひらサイズから大物加工まで、幅広い対応が可能です。また、横型ジグボーラーとも言える超精密横型マシニングセンター(三井精機 Jidic-H5C)を保有しており、高精度を担保しながら、加工時間短縮によるコストダウンを行う提案も可能です。弊社が保有するジグボーラーの一覧を下記の表にまとめます。一方で、治具製造に欠かせない研削盤やマシニングセンターも多数導入しておりますので、弊社の設備一覧に関する詳細は、下記ボタンから設備一覧ページをご参照ください。
弊社が保有するジグボーラー群
| 型式 | 名称 | 能力(単位:mm) | メーカー | 台数 |
|---|---|---|---|---|
| Jidic H5C | 超精密横型マシニングセンター | X760×Y620×Z700 | 三井精機工業(株) | 1 |
| 7CM | 精密ジグ中ぐり盤 | X1530×Y1020×Z800 | 三井精機工業(株) | 1 |
| 6B | 光学式ジグ中ぐり盤 | X960×Y760×Z800 | 三井精機工業(株) | 2 |
| 4B | 光学式ジグ中ぐり盤 | X600×Y400×Z460 | 三井精機工業(株) | 2 |
ジグボーラーを用いた弊社の製品事例

弊社が製造した治具ベース(イケール)の画像
次に、実際に弊社が製造したジグボーラーを用いた治具の製品事例をご紹介したいと思います。
1.建設機械業界向け油圧クランプ加工治具

| 材質 | S50C |
| サイズ | 奥行500×横710×高さ615 |
| 開発期間・納期の目安 | 開発期間2ヶ月, 加工納期2ヶ月 |
| 公差レベル | 直角度0.02以下 |
建機業界に向けて製造した油圧クランプ加工治具になります。今回の製品はお客様のご要望を丁寧にヒアリングし、弊社にて設計から加工・製作まで一貫して製作を行いました。
確実な高精度の部品加工と、容易な治具の着脱を実現する設計を弊社から提案しており、弊社の強みである治工具設計の高いノウハウを活かした製品です。特殊形状となりますが、弊社では同様の製作事例も複数持っております。
弊社ではこのほかにも、多数治工具の製作事例を有しており、随時追加更新予定となります。
ジグボーラーとは? まとめ
本記事では、ジグボーラーについて、概要から特長、また、当社の設備・事例について解説いたしました。
ジグボーラーは人手作業を削減し、自動化が推進されている製造業の潮流と反する設備とも言えますが、他の工作機械と比較して精度面においては圧倒的な優位性を築き、精度が求められ、小ロットの製品の製造においては、総合的に見た時にコストを抑えられるアプローチとして選ぶべき場合も多数ございます。
弊社(株式会社大塚製作所)は、60年以上治工具専門メーカーとして営業してまいりました。ジグボーラーを6台保有し、熟練技術者も多数在籍しているほか、若手技術者への技術伝承もシステム化して取り組むなど行っており、豊富な経験を活かして、設計提案から承ります。また、製品加工ももちろん承っており、総合的ものづくりを実現する設備環境は盤石に整えております。治工具の設計製作、精密機械加工に関するお困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。

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