治具の位置決めと効率的な加工を実現するポイントを解説!

弊社が設計・製作を得意としている治工具の中でも、『治具』は加工対象物(ワーク)を工作機械に固定し、精密な加工・製作を実現するために用いられます。この際の『位置決め』は非常に重要な工程で、ワークのずれや動きを防ぎ、精度を高めることで、製品の一貫した品質を保証することができます。特に繰り返し加工・繰り返し位置精度を向上させることに貢献し、品質の均一化と生産効率の向上を実現することができます。
それでは、加工の際の位置決めにはどのような知識や技術が必要になるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。今回は治工具の設計製作の専門会社ーである株式会社大塚製作所が、治具の位置決めのために必要な前提知識やポイントと、加工の品質向上を実現するために弊社が設計・製作した治工具の紹介を合わせて、ご紹介いたします。
治具による位置決めの基本
繰り返しとなりますが、機械加工における『位置決め』は、加工精度や製品の品質を左右する非常に重要な要素です。位置決めとは、加工するワーク(加工対象物)を正確な場所に固定することを指し、加工時の品質の一貫性や精度を確保するために欠かせません。位置決めが正確に行われないと、製品の寸法がずれることによる製品の性能の低下や、不良の発生や手直しの発生など生産効率の低下によるコスト増大のリスクが生じます。ここでは、その重要性について詳しく掘り下げて解説します。
位置決めの方法や種類に関しては、後ほど詳細に解説しますが、治具を用いて固定を行う方法として、『面で固定する方法』、『穴を利用して固定する方法』『点(ピン)で固定する方法』などがあります。ここでは、イメージしやすい面で固定する方法を考えてみましょう。以下に、イメージ図を示します。

面による固定は、主にブロック材、直方体のワークなど、固定可能な平面が3つ以上あるワークを加工する際に有効な手法です。位置決めの基本は、『X,Y,Zの3つの軸方向からワークをしっかりと固定すること』にあります。そうすることで、加工中に材料が動かず、精度が向上するのです。そして、3つの軸から固定する位置決めでは、『Z方向(面)に対して3点』、『X方向・Y方向として定めた方向(面)に対して、それぞれ2点、1点』で固定することが原則です。この時、軸や面の決定には、ワーク及び製品の形状や重心の理解が重要で、治具を設計する段階から気にすべきポイントの一つとなります。
また、上記の原則は加工時のズレを抑え、正確な加工を行うことを考えると、直方体に限らず、他の形状でも重要な位置決めの方法です。ですが、もちろん、3面以上の固定が不可能な場合もあるので、求められる加工精度や製品の形状に応じて、様々な位置決めの手法が考えられており、適切な方法を選ぶ必要があります。
位置決めが不正確な場合、製品に不具合が発生し、手直しや最悪再製が必要になることがあります。これらは、製品の品質を確保するための追加作業が増えるため、時間とコストが必要となり、生産効率も低下します。また、もう一つのリスクを挙げると、作業者の安全性にも大きく影響します。ワークが不安定な状態でセットされていると、加工中に振動が発生したり、ワークが動いてしまうことで工具や機械に負担がかかり、思わぬ事故の原因になる可能性があります。したがって、正確な位置決めはやはり重要な工程であり、治具の設計、生産工程・加工手段を検討する段階から、位置決めのことまで考慮しておく必要があり、加工時も正確に実施することが求められます。
位置決め方法の種類

(引用)株式会社渡辺製作所様 - 「各加工機の説明で出現するワード」
それでは、機械加工に用いられる様々な位置決めの手法について、一覧で紹介します。位置決めはワーク・製品の形状や、求める加工精度によって適切な方法を選ぶことが重要です。
- 平面による位置決め

概要でも紹介しましたが、ワークの底面を平らな治具や加工テーブルに接触させ、三方向の面にて固定を行う方法です。重力によってワークが安定しやすいため、安定した位置決めが可能です。平らな面を使ってワークの底を固定し、安定した加工を行うために使用します。この方法は、多くのフライス加工(マシニング加工)や旋盤加工で使われる位置決め方法です。特に、薄い板状のワークや底面が平らな部品で役立ち、重力を活かしてしっかりと安定させます。また、平面位置決めは、平行度や高さの調整が求められる作業に適しています。一方で、底面が正確に平らでないときに加工を行うと、浮きや歪みが生じることがあり、加工精度に影響が出る可能性があるため、底面がフラットであり、固定が安定しているかは極めて注意が必要です。
- 丸穴位置決め
ワークの穴を利用して位置を固定する方法で、丸い穴の内側に固定ピンや軸を挿入し、ワークの回転やスライドを防ぎます。複数の穴を使うことで、さらなる位置の固定が可能です。例えば、フランジやリングのように中心に穴がある部品で使用されることが多く、治具のピンを穴に合わせて装着し、横方向のズレや回転を防ぎます。円形の部品を確実に固定したい場合に利用します。また、固定ピンには真円状のストレートピンのほかに、製品の穴とのすき間(クリアランス)も生じるダイヤ形状のダイヤピンや、挿入しやすいようにテーパーがかかった形状のピンなどがあり、求める加工精度及び振動の抑制に向けて、適切なピンを選ぶ必要があります。注意点として、穴の直径と治具の固定ピンの直径が合っていることが必要です。サイズが合っていない場合、ワークが動いたり、加工時にズレが生じる可能性があるため、ピン径に合わせた精度の高い加工が求められます。
- 点による位置決め
平面による位置決めと同様に、底面は重力も活用して安定した固定を行い、X,Yの2方向から抑える方法で、違いは面ではなく、点で固定を行います。これは、ワークの面形状がフラットでない場合や、表面粗さによって面での固定が難しい場合に利用します。位置決め用のボルトや、ストップピン・ガイドピンを利用する場合がこれにあたります。平面による位置決めと比較すると固定する力は低下したり、適切な固定ピンが選べていない場合は
- Vブロック位置決め
V字の溝を持つ治具を用いて、円柱状のワークを安定させる位置決め方法です。ワークがV字の溝に安定的に収まり、さらに、Vブロックを固定することも含めて、安定した固定が可能であるため、側面や上面からの加工を行うことができます。したがって、シャフトやパイプのような円柱形のワークを扱う際に利用される方法です。Vブロックにワークを載せ、左右にズレないように配置することで、精度の高い加工が実現できます。角度をつけた加工や、長いワークを安定させて加工する際にも効果的な手法です。V字の溝とワークの径が合っているか、Vブロックのがしっかり固定されているかにはよく注意してください。
位置決めを行う際のポイント
それでは、正確な位置決め、加工精度の向上を実現するためにはどのようなポイントが重要となるのでしょうか?ここでは、弊社は治具の設計製作はもちろん、治具を用いた部品加工も行っているため、経験にも基づいて、位置決めを行う際のポイントを解説します。

- 工程の設計と、応力の考慮
複数の異なる加工を一度のプログラムで行う場合、応力が解放されることよるワークの変形を防ぐ工程の設計が重要となります。
『応力』は、材料を加工するために材料の外部から力(外力)がかかった際に、外力に応じて材料内部に生じる力・変形に対して抵抗する力のことです。応力は機械加工でも重要となる材料力学でも、理解すべき最も重要なポイントの1つでもありますので、もし理解できていない場合は、文献やネットを用いて調査してみることもオススメです。
では、正確な位置決めを行うためのポイントの話に戻ります。上記の通り、加工時にはワークに応力が発生し、変形が起こります。しかし、変形が起きてしまうと、加工前に行った位置決めにも狂いが生じてしまう場合があります。特に、厳しい精度を求められる精密機械加工においては、位置決めの誤差により生じる寸法誤差も許容範囲を超えてしまうこともあり、加工工程の検討段階で応力の影響を考えることは極めて重要です。
応力の解放を適度に行うために、大まかな切削を先に行い、その後の工程で再度位置決めを行う「中仕上げ→仕上げ」の順序をとることもあります。また、部分的な加工を複数回に分けて行うことで、応力を分散させ、変形を最小限に抑える工夫も場合によっては必要になります。この際には、位置決めも複数回行うことになるので、都度正確に行う方法や、位置決めの手段の考慮も必要です。
- クランプ・治具による固定の圧力のバランスの考慮
クランプによる固定の圧力について、ワークのズレを防ぐために強く固定することも必要な場合がありますが、強すぎる圧力は寸法誤差の増加や歪みの原因になってしまう場合があるため、バランスを考慮することも重要です。特にアルミニウムや樹脂など、柔らかい素材ではクランプ圧が過剰だと、固定箇所に歪みが発生しやすく、加工後に寸法がズレることもあります。そのため、固定時の圧力や位置決めの手段、治工具の機構はワークの材質や形状に応じて適切に設計することが重要です。位置決めに着目して考えると、固定点を対象に配置することや圧力のバランスのチェックも非常に重要です。
- 切粉の排出方法、残存切粉への注意
これは、位置決めに限らず機械加工を行う上で重要な要素となりますが、切粉排出の設計や加工者による清掃、切粉残しへの注意を行わなければ、位置決めも正確に行えず、加工精度が低下する恐れがあります。切粉の排出について、加工中に切粉が十分に排出されないと、切粉が加工面や工具周辺に蓄積し、工具の摩耗が進むだけでなく、切削温度の上昇を招きます。この状態が続くと、工具寿命が短くなるほか、表面仕上げの質が低下する可能性があります。また、切粉が加工テーブルに残存している、ワークに付着していることに気づかなかったなどのミスにより、ワークの位置決めの精度が下がり、工具とワークが思わぬ位置でぶつかり、製品の品質低下や思わぬ事故につながる恐れもあり、納期に追われている際など、加工者の注意力が下がってしまった際には起きやすいトラブルで、注意する必要があります。
これらのトラブルを防ぐためには、まず適切な排出システムを設けることです。システムとは言いますが、自動・手動は問わず、切粉の溜まりやすい部位にはエアブローや冷却液を使用して切粉を効果的に排出する必要があります。また、作業者に集中力・注意力の低下のチェックも重要です。特に複雑な形状や高精度が求められる加工、短納期の案件では作業手順をチェックリストなどを活用して複数人で確認するなど、チームでミスを防ぐ環境を整備することも重要です。もちろん、定期的な休憩などを設けて、作業ミスの予防を図ることも重要でしょう。
- ツールパスとの干渉の回避
ツールパス(CNC工作機械で工具が加工するためにワーク上を移動する経路)と治具の干渉は、治工具・ワークの破損につながるため、必ず回避しなければなりません。このため、治具の設計段階で、CAMやCADソフトウェアを利用し、ツールパスと治具がぶつからないかどうか、しっかりシミュレーションを行っておくことが効果的です。また、治具の位置決めの際に、正確に行えていない場合は、加工中にワークがずれる可能性があり、設計されたツールパスによる形状が再現できず、加工精度が出せない場合があります。また、加工中に治具やクランプが緩むことがないか、クランプや位置決めピンの位置が正確でないなどにより、加工中にワークが振動することによって、加工面が粗くなってしまったり精度が低下する可能性もあります。
他のポイントとも重複しますが、応力の考慮、圧力バランスの考慮が重要です。
位置決めを効率化するデルフィンクランプの紹介

ここで、効率的な固定かつ精密加工が求められる製品加工に使用でき、弊社も設計製作を得意としているデルフィンクランプを紹介します。デルフィンは、主に加工用の治具をワンタッチで固定を可能にするクランプであり、回転軸が設けられているためアームが柔軟に動くため、様々な形状の治具に対応可能、高い位置決め精度と固定力も持ち合わせています。加工時のワークの位置決めを行うためには、治具を正確に固定することも、もちろん重要であり、段取りには工数がかかるものですが、デルフィンは治具の固定がワンタッチで可能であるため、大幅な工数短縮が見込まれます。また、加工テーブルの仕様によっては、治具の配置にも制限がかかることもあり、専用の治具の製作が必要となるケースがありますが、デルフィンクランプを用いたシステムは幅広いケースに対応可能であるため、さらなるコスト低減が見込めます。さらに、精密機械加工に適用可能であり、デルフィンクランプでは、繰り返し位置決め精度は±0.02mm以内に抑えることができます。弊社はデルフィンクランプを利用したクランプシステム、ベースプレートの設計・製造実績を多数保有しており、オーダーメイドの治具製作のサービスも提供しておりますので、さらに情報が欲しい場合などお気軽にご連絡ください。
高精度な加工を実現する当社の治具製作事例

弊社では、効率的で高精度な位置決めが可能で、高品質な製品の製造を実現する治具・治工具の設計製作を得意としております。ここでは、弊社の製作事例を紹介します。
1.建機業界向け 油圧クランプ加工治具

| 材質 | S50C |
| サイズ | 奥行500×横710×高さ615 |
| 開発期間・納期の目安 | 開発期間2ヶ月, 加工納期2ヶ月 |
| 公差レベル | 直角度0.02以下 |
建設機械部品における油圧クランプ加工治具です。
ご要望に合わせた治工具の設計から加工・製作まで、一貫して行いました。
確実な高精度部品の加工と、容易な治具の着脱を実現する設計を、当社から提案させていただいております。これは、当社の強みである治工具設計の豊富なノウハウを活かした製品です。
2.産機メーカー向け 治具ベース


| 材質 | 主にSS材 |
| サイズ | ニーズに合わせて調整 画像は42×400×1400のデルフィンクランプ組付プレートを2個連結 |
| 開発期間・納期の目安 | 受注より1.5ヵ月 |
| 公差レベル | 平坦度0.02以内、穴ピッチ±0.02以内 |
半導体製造装置の部品製造など精密機械加工部品の製造に利用する治具(デルフィンクランプ)組み込みのベースプレートとなります。
高い位置決め精度を保持したままワンタッチ段取りを実現し、大幅な工数短縮が見込める本製品ですが、精密機械加工に用いられる性質上、ベースプレートの平坦度、デルフィンクランプ組み込み箇所の内径に厳しい寸法公差が求められるため、弊社の強みであるジグボーラー加工と研削加工の双方を存分に活かした製品となります
当社はこのほかにも、多数研削加工を含めた製作事例がございますので、お気軽にお問い合わせください。
治具の位置決めのポイント まとめ

弊社設計・製作の治具
本記事では、治具の位置決めの手法の種類やポイントを紹介しました。
部品加工時の治具による位置決めは、高精度の品質を提供するために重要な技術で、ワークの形状や重さ、製品の求められる精度などに応じて、適切な手法を選択し、また、位置決めの際に正確に行えているかを入念にチェックすることが重要です。
当社(株式会社大塚製作所)は、75年以上にわたり治工具専門メーカーとして営業してまいりました。ジグボーラーを6台保有し、熟練技術者が多数在籍しているほか、若手技術者への技術伝承もシステム化して取り組むなど、豊富な経験を活かした設計提案から承ります。また、製品加工ももちろん承っており、総合的なものづくりを実現する設備環境は盤石に整えております。治工具の設計製作、精密機械加工に関するお困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。


